ヒロインの名前は動体視力

思いっきり急ブレーキを踏んだあと力任せに言った。「ぜんぶ動体視力のせいだ!」

子どもの頃からの付き合いで、一緒に上京してきて、終電過ぎて仕事してるときも 33連勤の時も 始発出勤じゃ間に合わないから会社で徹夜してた時も(もうちょいマシな思い出ないのか)共に過ごしてきた私にこんなこと言われて何を思っただろう。あの時の動体視力の気持ちを考えると胃がギュウとする。

私はとある日を境に世界でいちばんネズミがダメになってしまった。もうとにかく何よりもダメなアレが、村ごと焼き払いたいものランキング堂々の第1位のアレが、会社のみんな乗せて運転してる時に植え込みから飛び出してきて、視界の端の端に一瞬だけ見えて、瞬間的にヤツのフォルムを認識して「ワギャー😫💥‼️‼️‼️‼️‼️‼️」と言いながら急ブレーキを踏んだ。そして冒頭に戻り動体視力をいたずらに傷つけた。
多分やけど視界の端に出現した瞬間ほぼ同時刻のオンタイムワギャー!だったとおもう。っていうかもはや出てくる前に予知ワギャー!してた気もしてくる。これらも限界を超えると未来予知になることも君が教えてくれたね動体視力。時間も遅くて人通りも少ない道だったからよかったものの動体視力が良すぎるせいで会社のみんなを危険な目に遭わせてしまうなんて超本気ワギャーである。そういういろんな気持ちがあってつい口に出してしまった「こんな動体視力なんていらない…!」と。「弱いリザードンなんていらない…!」とリザフィックバレーでしばしの別れを決意したサトシのようだった(全然ちがいますよ)

ネズミ…いやもうタイピングするのもウッ…となる。思い出して胃がギュウとなる。人生で何回じぶんの胃をこう雑巾の様にギュウしてきたのかもう分からんけどほぼ全部ネズm…あのお方(あのお方)のせいだった気がしてくる。私がネz…あのお方を嫌になったエピソード聞くとみんなス…と黙ってひたすら同情してくれるけど死ぬほど泣いて色がハゲて耳かじられたわけではないです。全然関係ないけどiPhoneでn…いやヴォルデモート(ヴォルデモート!?)と打つとメチャクチャリアルな絵文字が予測変換で出てくるねんけど、アレ見たらなんで生きてるのか分からんくなるくらいなのに来年の干支ヴォルデモートらしいじゃないですか。いうて干支なんて年明けと節分の時しか言われんし今年が猪だって最後に感じたのいつかもう覚えてないし数ヶ月息を止めてヴォルデモート年が過ぎ去るのを大人しく待とうと思う。お前はハリポタ世界でもモブのマグル。干支がヴォルデモートってなんやねん。

 

私と動体視力は帰宅するまでの車内でも着いてからそれ以降もそのまま一言も口を聞かず、背中を向け合って寝た。翌朝も何も会話しないまま一緒に仕事に出掛けた。私が靴を履くと何も言わずに玄関に来た、一緒にいたくなんかなかったと思うけどそれでもついてきてくれた。

その夜、会社のひと🐏🐢とカレーを食べに行った。🐏はいつも専務の🦀ちゃんに「アイツにはカレーでも食わせとけ!」と黙れの意で食わされそうになるほどカレーを愛している。いつでも食べたいらしい。いつでもだって?フン。よく言うよ。こっちは動体視力といつでも離れられなくてこんな想いをしているっていうのに…。動体視力の方をちらりと見ると何かを考えてる様子で遠くを見つめていた。🐏を助手席、🐢をその真後ろ後部座席の左に乗せてそれぞれを家まで送る。その途中で「ここらへん前住んでた家だ」と🐢が言った。そうだったね懐かしいねおでん食ったねと話していた。

その瞬間、青信号の交差点を直進しているとすごい勢いで真左から車が突っ込んできた。

目の前を横切る形で急停止された。こっちは頭を突っ込む形で停まってる。

私の方が青信号だった気がする、ということはあっちが赤?ってことはなんだあっちは信号無視?いやこっちほんとに青だったか?事故に遭う確率って何%だったっけ結構低いなと思った記憶があるんだけどな、と今はどうでもいいことを考えた。心臓止まりそうなくらいビックリしながら前方を確認するとギリギリのところでちゃんと急ブレーキを踏んでいたことを今更知る。

 

(動体視力…!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!)

 

昨日、あんなひどいこと言ったのに。ヴォルデモートを瞬間的に認識したくないからと言って、お前なんかいらないまで言ったのに。動体視力…動体視力…!!!お前…一体どんな気持ちで今、急ブレーキを、うっ…動体視力!!!!!!!

割とすんごい事故だったぽいけど🐏も🐢も無傷だった。私が謎に膝小僧をすりむいただけだった。サトシみたいに。直後にツイッターで「事故ったワロタ」みたいなツイートしてるくらいには大丈夫だった。

突っ込んできたお姉さんが車から降りて血相変えて飛び出してきた。「本当にすみません ボーッとしてて 怪我してませんか」動揺しながら謝りながら心配してくれて「そちらは怪我してませんか」と尋ねながら動体視力の手を強く握った。私たちはみんな無傷です、そう彼女のおかげでね。久しぶりに目が合った気がしてそっと微笑むと動体視力は照れ臭そうにそっぽを向いてそのまま小さく「…ばかっ」と言った。

動体視力…もうこの手を離すもんか。ヴォルデモートがなんだ。人間の方がサイズはおっきいんだぞ四足歩行め。鳴き声出されると吐くけど。足音でも吐くけど。

 

このあと海外転勤になった私を空港まで追いかけてきて羽田の国際線ロビーで熱いキスをして月9じゃん、という話まで実際にしたんやけど流石に意味不明すぎたので社内に留めておく。
意味不明すぎて言えないとか言う割にここまで書いたものは問題なかったのか。その基準は一体なんなんだ。クソみたいな代車がきた話とまとめてまたいつか聞いてくれ。