合コンのツラしたパリピのライアーゲーム

私がずっと営業かけてるとある女性の経営者がいる。
トウキョウの女社長…と言ってもみんながみんなシャネルのジャケット着てデッカいバーキンにマックブック突っ込んでマリオに出てくる踏んだら死ぬトゲトゲの敵みたいなルブタン履いて真っ赤なポルシェを青山通りに路駐しているわけではない。けど、この人はわりとそんな感じの社長。
起業して十数年の超やり手なんやけど、意外と乙女ロマンチックなので「こないだカレと旅行いった話聞いて❤︎」みたいな電話が以前はよくかかってきてた。仲悪いわけじゃないけど私は営業目的で彼女はプライベートの友人だと思ってくれてるこの溝のせいでなかなか仕事に繋がらない。もうこの人と仕事するの無理そうかなと思って最近こっちから連絡してなかったけど先日久しぶりに電話がかかってきた。

「あのね〜…お願いがあるんだけど〜…」って言われた瞬間に「やります」と最強の安請け合いをした。コレいつもやる。お決まりの社畜ネタ。コロナ大爆発してた初期の頃に武漢の取引先からすぐに来てほしいって言われた時だけ発動せず自分は命が惜しい方の労働者だと知った。どうでもいいけど私を含めた「御社のためなら死ねます!」の古い社畜の皆さんたち、ウイルスパニック初期の頃マジ試されてたな。
「やりますってwまだなんも言ってないよーw」マジこんな感じの話し方で笑われた。語尾にwついてるひとけっこういるよね。オタク・アイズにしか映らないのかなアレ。
「この日空いてる?」「空けられます。夜ですか?」「うん、夜。19時くらいかな。会わせたいひとがいるんだよね」会わせたいひと!その展開は初。
「っていうか話変わるんだけど」いや変えるな!!続けてくれ!!
「カレシと別れました!(泣)」
私には見えた。語尾のカッコ泣きが。
「えっ!あの彼氏さんですか?」「そう!も〜、マジ、やばくない?落ち込むんですけど」
な、なんか嫌な予感してきたな。基本的に、まあ勿論人によるねんけど起業した人間の行動力って半端ない。野ウサギより瞬発的に動く。となると、ここまでのやり手の社長がやることなんて一つしか
「合コンしない?」ハイ、来た。もうアカン。予定空いてるって言ってしまったしパソコンの画面チラッと見たら食べログのリンクが送られてきてた。開いてないけど絶対に当日の場所やろうな…野ウサギめ…。いつか『起業家と野ウサギの共通点』っていうタイトルで論文書いてやる。両方スゲー素早いんだよね!(ニカッ!)って一言で終わりそうやけど。んなもんツイッターでやってくれ。
どうしようかな。そういう会あんまり好きじゃないっていうか仕事に繋がりづらくて行く意味があんまり、と思ってたら「でもこういう会苦手そうだよね…?やめとく…?私のことは全然気にしないで…」と断りづらすぎる先手を打たれた。もういいや。約束しちゃったし行こう。この人が招集したひとびと興味あるし。
「いえ!行きます!楽しみです」クソつまんなかったら明日ゴルフっつってすぐ帰ろう。明日ゴルフっていうとみんなすぐ帰してくれるので魔法の呪文みたいになりつつある。シンデレラが0時までに帰らなきゃいけなかったのも次の日ゴルフやったからやと思う。

そして当日。もう夕方っていっても明るいな、春だな、と意外と風流なこと(?)を想いながら食べログのリンクを元に指定された六本木のダイニングバーに向かった。
どうでもいいけど食べログの地図の画面、[アプリで見る]を押すと食べログのアプリに誘導されるの毎回バチギレそうになる。私が思うアプリはその遥か下に小さく載せられたグーグルマップやねんな。
全員で何人になるのかも聞いてないし女性陣の職業も一切聞いてないから皆が何着てくるのかの予測が全く出来ず、とりあえず人とかぶらなさそうな服をと思いミッシェルクランの青いツイードのセットアップを着て来た。誰ともかぶらんことを祈りつつ麻布方面に歩きながら目的の店を探すと、それらしいビルの前の喫煙所でタバコ吸ってる女社長が青のツイードのセットアップ着て優雅に手を振っていた。う、嘘だろ。
会釈しながら近づいて行くと「えー!私たち双子みたいだね!w」と声を掛けられる。この時点で帰りたかった。もうこの世の誰も着てくれるな青のツイード。『作るな売るな買うな着るなメルカリに出すな青のツイード』と心から思った。
タバコを吸い終わった主催と一緒に店の中に入るとさりげなーくジャケットを脱いで白のブラウスになる。これで卍ペアルック最強おそろッピ双子ちゃんコーデ卍からは解放された。あっぶねー。もうみんなで着る服事前申請制にしようよ〜。私こないだ赤ジャケット着て会議行ったら隣の席のひとが黄色ジャケットで吉本新喜劇のモブのチンピラみたいになってドン引きしたし邪魔するなら帰りそうになった。

いちばん奥のややデカめの個室みたいな部屋に案内されると男性が5人と女性が3人いた。我らふしぎ星のふたご姫(このネタ伝わるんかな)2名を足すと5人対5人になる。早めに来たけど私が最後っぽかった。おっきいソファが2つあって壁際に椅子が何脚か置かれてる。中央に丸テーブルがあってその上にはオシャレオードブルとオシャレシャンパンクーラーがあった。みんな基本的に立ってるスタイルっぽい。挨拶しながら入って行くと紺色のスリーピーススーツにボルドーのネクタイ、ストライプのシャツ着て左手の薬指に金の指輪をつけた”新田真剣佑のパクリ”みたいなオニイサンが来た。多分、外資系の保険屋の営業マン。赤坂か外苑前かあの辺で働いてておそらく新婚。まだちっちゃい娘さんがいそう。
「主催さん!なにこのメンツw気合い入れすぎ!」「そうそうみんな綺麗でしょ。私以外は」「何言ってんすかw主催さんが誰よりいちばん綺麗すw」「ちょっとー!みんな聞いたー!?こいつほんとムカつくんだけどーw!」「ひどっw褒めてるのにw」「はあ〜?殴っていいかな?w」……………ひ、久しぶりに見たなこんな感じのノリ。初めて書いてみたなろう系小説かと思った。転生された方々かと思った。

パクリの真剣佑…いやパッケンユウが名刺を差し出してくれた。「今日は男側のメンツ集めました。普段は保険の営業やってます。」まあ、ぽいよね。と思っていたらコソッと追加で言われた「全員ちゃんと大卒以上なんで安心して下さいw」何を…エエ……何を?!!?
なんか、こんな感じか〜。もしかしたらとおもって来たけど、まあ、そうよね。今思い出したけど明日ゴルフだった気がしてきたな。
主催がシャンパングラスを持って全員を見渡す。「今日は私の失恋を慰める会に来てくれてありがとうw」アッそういう会なのねおk。
「女性陣は、ほんと、私が付き合いたいくらいの素敵な人たちなので。メンズたち〜!何かやらかしたら許さないからー!」みたいなことを主催が言った瞬間、ベリーショートの水原希子みたいな女性が急に目を見開いて言った。「えっ!今日ってそーゆーかんじの会なんですか?私カレシいるんですけど…」
今思えばコレが開戦のゴングだった。
「あっ!そうなの?ごめんね私がちゃんと言ってなくて」「いえ!私の方こそゴメンなさい> <」と、主催とベリショ原希子の話は問題なさそうに終わりそのあと普通にシャンパンでカンパイした。
主催が紹介してくれてパッケンユウ以外の全員と名刺交換した。殆んどが経営者でなんちゅう会じゃと思った。ベリショ原希子はやっぱり元モデルで今は営業代行してるらしい。食べても太れないからとっにかく大変!> <らしいけど普通に生きてて体重増加を強いられることってなんかあんのかなって気になっちゃった。
全員と名刺交換してウチと取引可能そうな人たちとは来週それぞれ会う約束してもう完全にやること終わった。合コンとかいうものに来たのはコレが初めてやってんけどマジどうかと思う参加者だった気がする。

みんなどういう会話してるのかなと思って静かにしていたら気付いた。なんか、おかしい。
会話がいくつかのグループに分かれているけど主催と話していない人たちの声がやや小さい気がする。じっと聞いてみると投資家がどうとか、休日は何してるのか、シンガポールで独占契約がなんとか、タイプの芸能人などと言っている。恋愛トークに絡ませて自社の実績を言い合ってるっぽい。ちなみに『タイプの芸能人を聞かれて無難な回答2020』は「星野源」と「水卜麻美」らしい。ぶ、無難…!?!??!

じっと観察しててやっと気付いた。主催以外全員が「営業目的」だ。相手がマジで恋人探しに来てたらアレなので目的を探り合っていたらしい。一体何をしているんだ。
どうしてコレが始まったのか考える。分かった。ベリショ原だ。ベリショ原が表明した「私は恋人を探しに来ていません」という戦線離脱宣言から全ては始まっていた。カレシがいるベリショ原を口説くことは出来ないしベリショ原はカップル成立させたい主催にヤな顔されず堂々と仕事の話だけが出来る。ベリショ原とパッケンユウがビジネストークを繰り広げてるところに別の経営者が参戦し以下略っぽかった。そ、そんなことあんのか。スゴイな…!?!?君たちが手を組めばすごい詐欺を考案できそうだ。

パッケンユウがグラス持って話しかけてきた。「こういう会あんま来ないっしょ?」
この人苦手かもと思いながらも名刺を渡して身元が割れてる以上ここで処すわけにはいかないので普通に話すだけ話す。「そうですね」「いつも仕事してそw」「そうですね」「休みの日何してんの?」「仕事ですね」「休みじゃないじゃんw」アカン。スーパーゴルフタイムが近付いて来てる。「仕事すき?」「好きですね」「何が好きなの」「ふつうにウチの会社のことが好きです」「へー」久しぶりにこういうタイプに会ったなと思って自分の普段の環境がいかに恵まれてるかを感謝してたら
「頑張ってて、えらいね」と頭をポンポンされた。

「すみません明日接待でゴルフなんです」「へーゴルフやるんだ 俺もやるよ」「へえ お化粧室ってあっちですか?」「えっとね」返答も聞かずに主催の元にまっすぐ向かった。ここまで即刻シャンプーしたいと思ったことが今まであっただろうか。とにかくはやく帰りたかった。ホンモノの真剣佑、同期のサクラ…すごい良かったよ…。
主催に話しかけようとするとまた先手を打って言われた。「あたし…カレと別れて良かったの…かな……?」い、今!??!???!
「良かったんじゃないですかね!?!!?!」もうとにかく勢いで押そうとした。最悪の受け答えだった。
ベリショ原が横から話しかけてくる「主催さん、未来の恋に生きなきゃダメ!」その他の会話や発言は今思い出しながらなんとなく書いてるけどここだけマジの水原希子が言いそうだったのでメチャクチャ覚えてる。マジ原希子、未来の恋に生きろと強く背中を押してきそうすぎる。

主催が別の何人かに誘われて一緒にタバコを吸いに行きベリショ原と2人になるとすぐ「私そろそろ帰りたいんですけど一緒に抜けません?」と言われた。女神よ。一緒に帰ろう…きっとこの辺に住んでいるんやろうけど…。
「さっき、頭ポンポンされてマジギレしてましたよね」ベリショ原に意外なこと言われた。「マジギレまではしてないです。今日ハゲるくらいシャンプーするだろうなってぐらい」「なにそれ笑、超ウケる笑」ベリショ原、語尾に笑が付くタイプで更に意外なことに私と同い年だった。
いろんな人がいるんだなあ〜とこの日改めて思った。その日帰ってからシャンプーしすぎて頭のテッペンだけ普通にハゲた。
ちなみにベリショ原、彼氏はいないらしい。内緒ね、と教えてくれた。このエキゾチック策士は合コン営業(何それ)の専門家なんだろうか。「いつもこんなカイジみたいなことやってるんですか?」「カイジってキンキンに冷えてる方の人ですか?」「いや、キンキンに冷えてやがるのはビールです」「ビール笑」という謎の会話をした。

私は好きな人とだけ生きていきたいなと思っているけど、たまにこういう…外部からの余計な刺激を入れると体の免疫力がガンッと上がる気がする。パッケンユウ、きっといろんな人から裏で「ヤクルト5000」って呼ばれてるんだろうな。
っていうか会話の流れで何故か「デュラララの作者ってなんて名前だっけ」って話になって(本当になんの話だよ)みんなで詰んでたので「成田良悟です」ってつい瞬発的に答えちゃったんやけど「知識人だねえ〜」と感心されて衝撃だった。オタクは知識人。それ毎日メルマガかなんかでその一文だけ届けてほしい。

そして主催はその後フツーにカレとヨリを戻したらしい。良かったな!?。そして私はもちろん次の日ゴルフに行ってなくて、ベリショ原とパンケーキを食べに行ってたのであった。良かったね。